2019年10月の消費増税がすぐ目の前に迫ってきています。
そんな中、ある政党の代表のインタビューが注目を集めています。
同年7月の参議院選挙で躍進した、れいわ新選組の山本太郎代表。
そんな山本代表が首相になったら実現したいことがあり、彼はインタビューでこう話しています。
『まず消費税を廃止します。』
消費税を廃止、つまり0%にするということですね。
いま、教育無償化への財源確保のために消費増税が行われようとしていますが、完全にそれとは逆行する形になります。
ただ、消費税が0%の国というのは実際にありますが、特に財政難というわけでもありません。
この山本代表が言い放った消費税0%の実現については、
現状、実現することは極めて困難。
しかし、税制を徹底的に見直すことで実現できない話ではない
と考えられます。
この記事では、消費税0%の可能性について上記のように判断した根拠について、詳しく見ていくことにしましょう。
日本の消費税の目的と0%の実現可能性
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消費税の目的とは?なくなったら困らないか?
平成のスタートとともに導入された消費税ですが、その目的は3つあり、
- 税制全体のバランスを取るため
- 個別間接税の問題点を解決するため
- 高齢化社会の財源を確保するため
です。
仮にいま、消費税が廃止されたとしてこの目的が果たせなくなりどれだけ困ることになるのか、一つひとつ見ていきましょう。
税制全体のバランスを取る
昭和時代の税金(税収)は所得税が中心でした。
しかし、昭和の後期、高度経済成長期の終盤ごろには商品やサービスの提供が多様化し、その傍らで所得水準も上昇してきました。
そうすると、それまでの税の仕組みでは時代にそぐわないことになり、そのバランスを保つために消費税が導入されたというわけです。
そういう目的からすると、今バランスが取れているか?と言われるとそうではありません。
昭和⇒平成に時代代わりする際に消費税が導入された代わりに所得税と法人税が引き下げられました。
結果、富裕層と貧困層の格差社会が出来てしまいました。
時代が令和に変わったこのタイミングで、消費税が税制全体のバランスを取る役目を果たしているか、再び考える余地はあります。
単に税率を上げるだけでは、余計にそこがアンバランスになり、導入当初の目的からはさらにかけ離れることになるでしょう。
個別間接税の問題点を解決する
実は、消費税導入前の昭和時代にも、消費税によく似た”物品税”というものがありました。
普段の日用品には課税せず、毛皮などのぜいたく品にだけ課税するというものでした。
要するに、ぜいたく品が買える富裕層からたくさん税金を取ろうという考えですね。
しかし、高度経済成長期が進むにつれて所得水準が上がり、それまでぜいたく品に手が出なかった人でもそういうモノが買えるようになってきて、何がぜいたく品なのか?という線引きがあいまいになりました。
その影響で、どんな商品・サービスにも一定の税率を公平にかけよう、というねらいで消費税が導入されたわけです。
しかし、消費税率が8%⇒10%に引き上げられようとしている今、”軽減税率”なるものでモメていて、その火種はまだひそかにくすぶっている印象です。
これも結局はかつての物品税と同じく、日常必要不可欠なものだけ税率を下げようというまどろっこしい体制になります。
消費税導入当初に解消しようとしていた問題を、再び蒸し返す
そんな制度であると感じます。
高齢化社会の財源を確保
平成時代に突入したころ、日本は”高齢化社会”と言われる国でした。
それが今や、
”高齢化社会”⇒”高齢社会”⇒”超高齢社会”
というように、悪い意味で2つもランクアップしてしまったわけです。
そして、高齢者には給与収入がないため生活するには国からの補助が必要になりますが、その財源を消費税から確保しようというのが、導入当初の狙いでした。
超高齢社会の日本で、消費税が高齢者の食い扶持になっていることを考えると、消費税がなくなると高齢者が生きていけなくなる…
となると、消費税廃止はやはり絵に描いた餅?
ところが、一概にそう考えるのも早合点で、れいわ・山本代表のコメントでも言われていますが、
「国は、所得税と法人税を下げて、足りなくなった財源を補填するために消費税を上げました。これを元に戻せばいいだけ。税金はあるところから取れって話なんです」
要は初心に立ち返ってみては?ということなんですね。
いま、働き方改革で労働者の実質収入が減り、将来的にも終身雇用が無くなろうとしています。
つまり、企業側だけがオイシイ思いをしていることになるので、その見返りに法人税を上げてやればいいわけなんです。
これで、超高齢社会に備えた財源も確保できるという話です。
0%への実現可能性は?
日本は世界的に見ると、消費税率は低いほうに位置しています。
(出典:https://www.leopalace21.jp/contents/world-tax-ranking.html)
2014年4月までは消費税率5%でしたから、このランキングでは世界最低に位置していたわけですね。
しかし、クウェートは0%、カナダは5%、日本よりも税率が低い国もあってしかも財政難というわけでもない。
それらの国がどうやって成り立っているかというと、クウェートもカナダも資源国であることが一番の理由です。
どちらの国も石油が取れるので、それを諸外国に売ることで収入になりますから、それが直接国の財源となるわけです。
もう一つの理由として、日本よりも高齢者人口の割合が低いことです。
国全体の人口に対する65歳以上の人口割合は、
- 日本:27.5%
- カナダ:17.4%
- クウェート:2.5%
(出典:2018年グローバルノート)
いかに日本がダントツかが分かります。
働き手世代が多ければ当然税収も確保できるため、国の財源は潤ってきます。
資源国でもないし、超がつく高齢社会、しかも消費税がバカ高いわけでもない日本で、消費税をなくすことはできないのでは??
先ほど紹介した山本代表のコメントの通り、税金はあるところから取ればいいだけで、何も全体的な税収を減らすということではありません。
そして、山本代表はこうも言っていました。
『なぜ、法人税が下がったかというと、大企業は組織票を固め、自分たちの言うことを聞いてくれる議員を当選させて、政治を動かしてきたからです。』
消費税とは関係ありませんが、2018年、与野党がモメにモメた働き方改革。
その火種のもとが”高度プロフェッショナル制度”と呼ばれるもので、特に過労死遺族からは猛烈な批判を浴びてきたにも関わらず与党は権限の力で強行採決に踏み切りました。
それも、大企業が結託して組織票を固めた結果と言われれば、納得ですね。
消費税0%になるとどうなるのか?
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0%の国の現状
消費税が一切かからない国:クウェート
冒頭で『消費税0%の国は実際にある』といいましたが、それがクウェートです。
消費税0%でありながら、しかも教育費まで無料というありがたさ。
将来的には付加価値税の導入が予想されていますが、今はまだ所得税も付加価値税もありません。
国民にとってはまさに天国のような国ではないでしょうか。
ただ、先ほどもお伝えしたとおり、クウェートは石油埋蔵量世界7位で天然資源に恵まれており莫大な石油収入があるため、こういったことが実現できているのです。
日本はというと、世界に販売できるような資源はなし。やはり、消費税を廃止するためにはそれに見合う収入が必要ということです。
ならば、0%でないにしても日本より低税率な国はどうでしょうか。
0%ではないがもっとも安い国:カナダ
カナダの消費税率は5%、0%でない国の中では最も低い税率です。
カナダに消費税(正確にはGST:物品およびサービス税)が導入されたのは1991年のことで、日本の消費税導入時期(1989年)とほぼ同時期です。
消費税の導入当初、日本は3%でしたがカナダはいきなり7%を課しました。
カナダも当時は財政難だったため、財政健全化が目的とはいえ消費税導入には国民の反対の声が多数ありました。
しかし、その後カナダは財政健全化に成功し、リーマンショックで各国がダメージを受けた2008年には税率を5%へ引き下げています。
日本はというと、財政健全化どころか景気は一向に良くなりません。何度も増税を繰り返してきましたが、消費税率を上げるだけでは根本的な解決になりませんでした。
それでは、逆に日本も消費税を廃止するとどうなるか、次の章で見ていくことにしましょう。
日本が消費税0%になると?
消費税がなくなれば、消費が伸びるのは間違いないでしょう。
我々からみた購買価格が下がるので、単純なカラクリですね。
すると、収入がまったく増えていなくても確実に生活は豊かになります。
商品やサービスを売る側(店、会社)のほうも、消費税がなくなったおかげで売り上げがのびて、経営も潤ってきます。
れいわ・山本代表のインタビューでも、
『日本は、デフレが続いた結果、経済規模が縮小し、そのしわ寄せは労働者に。この負のスパイラルから抜け出すには、消費税をゼロにして消費を喚起し、景気を上向かせるしかありません。そうすれば賃金も上がってきます』
と言っています。
いたって単純な所に着眼したというわけですね。
まとめ
我々にとっては確実に家計の負担になっている消費税がなくなるという夢の話。
消費税が無くなれば確実に生活は豊かになり、それが巡って商品・サービスを売る側も潤って給与水準もアップします。
そんな施策の実現可能性は、
現状、実現することは極めて困難。
しかし、税制を徹底的に見直すことで実現できない話ではない
平成時代の幕開けとともに導入された消費税ですが、高齢者支援の財源目的以外は今の状況にはよく分らない目的ばかりです。
一方、高齢者支援の財源目的でも、税収の割合を変えてしまえば消費税をなくしても確保はできると、れいわ新選組の山本太郎代表はズバッと指摘しています。
その最たる理由が企業の組織票。
特に第二次安倍政権の時代になってからは、いかに『強きを助け、弱気をくじく』政治になっているかが伝わってきます。
そういった政治の”悪しき習慣”をただすことができれば、あながち夢だけで終わる話でもないと思われます。
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