お盆休みも近づいてきて、夏も真っ盛りになりましたね。
夏の暑い時期は海水浴!の予定を立てている人も多いのではないでしょうか。
各地の海水浴場の大半は海開きして、水着やサーフボードを持った人もちょくちょく見かけるようになりました。
しかし、楽しみだったはずの海水浴で、毎年必ず犠牲者・行方不明者が出ていて、今年こそはそういう悲しいニュースを聞かない年であって欲しいなぁ~と願うばかりです。
さて、いきなりですが、画面の前の皆さんは、
離岸流(りがんりゅう)
という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
読んで字のごとく、岸から離れる流れです(そのまんま)。
”リップカレント”とも言われたりします。
そして、この離岸流が原因の事故が少なくなく、遊泳中の事故の約2割を占めていると言われているんです。
(出典:海上保安庁資料より)
『2割?そんなに多くないよね?』
数字を見て、そう思った人もいるんじゃないでしょうか。
2割のもとになっている事故全体の中には、遊泳禁止場所で泳いでいたなど、そもそも安全上のルールを無視していたことによる事故も含まれています。
なので、ルールを守っていたにも関わらず事故になったことに絞れば、その割合はもっと高くなります。
『ルールを守っているから大丈夫!』
と考える人の不意をついてくるのが離岸流なんです。
特に注意したいのが、子供。
大人に比べて身の危険を感じたときに落ち着いて対処できず、結果、余計にダメなことをしてしまうことが多いのです。
そこで今回は、その離岸流についてその恐ろしさをお伝えするとともに、流されないための離岸流の見分け方や、万一流されてしまった時の対処法を説明していきます。
離岸流とは?
離岸流ができるしくみ
海岸から離れていく水流…で思い浮かぶのが、打ち寄せた波が引いていくことだと考えがちですが、あれとは別物です。
引き潮よりも勢いがあり、わかりづらいのが離岸流なんです。
ザーッと打ち寄せては引いていく波ができるのは月の引力によるものですが、離岸流は海岸に吹く風で岸に寄せられた潮が帰っていく流れのことです。
(出典:https://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/ibaraki/04shiryou/rigannryu/riganryuu_genri.htm)
海岸に向かってくる流れ(向岸流)ばかりだと、海岸にどんどん水がたまっていきますよね。
でも現実はそんなことはなく、離岸流があるから海岸が水浸しにならないのです。
流れの速さ
離岸流は1秒間に2mの速さと言われています。
だいたい、人間が急ぎぎみで歩く速さですね。
時速ウン十キロとかいうとてつもない速さではありませんが、よく考えてみてください。
1秒間に2mということは、50mだと25秒です。
これって、けっこうすごいタイムなんです!
25秒台:50代後半~60代前半男子マスターズスイマー入賞レベル。20代~30代前半女子マスターズスイマー入賞レベル。速い高校水泳部員。中学全国大会出場標準記録。
(出典:https://swimminglovers.com/%E6%B0%B4%E6%B3%B350m%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0/)
マスターズスイマーとかいうすごい言葉が出てきましたが、絶対にいえるのは、小学生以下の子供ならまずあり得ないタイムだということです。
管理人でも25mで20秒弱ですから、離岸流の速さには遠く及びません。
純粋にタイムで勝てたにしても、ひたすら流れに逆らうにはそれ相応の体力が要りますし、離岸流はへこたれませんから体力が尽きた瞬間に流されます。
それほど、離岸流は怖いものだと知っておく必要があります。
対処法
人工的に作られたプールとは違って、海水浴にはこういう独特の自然の脅威があり、そしてそれは人間の力ではどうすることもできません。
なので、
- 事前に予知して避ける
- 巻き込まれたら下手に逆らわない
ことを覚えておくのが、安全に海水浴を楽しむ極意になります。
なので、この2つについて詳しく見ていくことにしましょう。
見分け方
予め危険なことが分かっていたらそこに近づかなければいいだけなのですが、離岸流は目で見て分かりづらいものなんです。
次の映像を見てください
映像のなかで流れが示されていますが、それでも『そう言われてみれば…』ぐらいにしか分かりません。
それが、離岸流の怖いところなんです!
ただ、離岸流が発生しやすい場所を知っておくだけでも事故に遭う確率は減るので、それを押さえておきましょう。
- 堤防などが突き出ている
- 海岸の地形が凸凹している
どちらも、海水が打ち寄せてくる先(海岸)が何らかの原因で凸凹しているという場合です。
海岸が真っ直ぐ綺麗になっていると、押し寄せてきた波は一斉に沖へ帰っていきますから、離岸流ではなく波の押し引きになります。
その場合は、全域が向岸流か離岸流のどちらかになりますね。
そういう海岸はあり得ないのですが、凹凸が大きいと離岸流が発生しやすいということは覚えておきましょう。
今度は、離岸流が残した爪痕をみます。
離岸流のそばには向岸流が流れており、それによって海水内のゴミが打ち上げられます。
つまり、ゴミが多く溜まっていれば頻繁に離岸流が発生していると判断できるわけです。
また、離岸流が発生しやすい時間ですが、そればかりはまちまちです。
先ほど説明した海岸の地形をはじめ、いろんな条件が重なってできるものなので、その条件がいつ出るか?までは予測できません。
万一、流されたら…
我を忘れて水遊びしていて、気づいたら海岸が遠くなっていた…
そんなとき、どうしますか??
大半の人は何とか海岸へ戻ろうと必死で流れに逆らって泳ごうとしますが、それは一番やってはいけないことなんです。
先の説明のとおり、流れの速さは水泳上級者レベルで、しかも流れの体力が衰えることもありません。
ならば、どうすべきか?について説明していきましょう。
沖のロープ(ブイ)を利用
(出典:http://www.aichi-ls.org/seaside/utsumi.htm)
海水浴場は大半の場合、遊泳可能エリアと分けるために図のように沖にブイを張って境界線が分かるようにしてあります。
そのブイに捕まって身体を休め、手を大きく振って助けを求めます。
気付いてくれない場合などは、ブイを伝って行けばブイを固定している陸地にたどり着くことができます。
流れに対して垂直に泳ぐ
このことは割とよく言われていますね。
流れに逆らうのではなく、流れのレールから抜け出すのです。
抜け出せたら、海岸まで泳いで戻ります。
最初の図のように、離岸流のすぐそばを向岸流が流れているので、うまくいけばそれに乗って早く海岸にたどり着くこともできます。
時々真上を向いて浮く
これは助けを求めるというより、泳ぎ疲れたときの疲労回復の手段です。
背泳ぎって、けっこうラクだな~って思ったことはないでしょうか?
理由はカンタン!
いつでも呼吸ができるからです。
だから、水の上で休憩するにはもってこいなんです。
休憩中は泳がないので、”背泳がない”ですかね(笑)
ただ、背泳ぎって初めての場合は結構怖いです。
- 空しか見えないから行き先が分からないし
- 鼻に水が入ってくる恐怖もあるし
まさに、管理人が初めて背泳ぎにチャレンジした時に感じたことです。
そういう時は、プールなど流されない場所で、鼻をつまみながら真上を向いて浮いている感覚をつかむと驚くほど背泳ぎが上達するので、やってみてください。
安全な海水浴場選びのポイント
次に、安全な海水浴場選びのポイントをお伝えします。
監視員がいること
もはや、当たり前ですね。
もっというと、監視員の目が全体にまんべんなく行き届いていることが安全のために必要です。
そして、離岸流について訊いてみると、詳しい人なら発生しやすい場所とか教えてくれるかも知れません。
沖にブイが張っていること
先ほど説明した通り、流されたときのストッパーの役目をしてくれます。
海水浴場ならほぼ当たり前についていますが、行く前に情報収集しておいたほうが確実です。
いざというときの命綱
特に、身体全体が乗るような浮き具に乗っていると完全に流れまかせになります。
#ヒビカン
昔、年少の僕と年長の兄と膨らまして乗るボートに乗り海に浮いていたら、離岸流に引っ張られ、岸からどんどん離れていき、二人で泣いていたら、それを見つけた親父が猛烈なクロールで助けに来てくれました。岸にたどり着くと、必死だった親父は猛烈に鼻水でてたけど、かっこ良かったなぁ— オラフ (@joy_masatora) July 30, 2014
5 海
中学校のときゴムボートで遊んでたら友達がふざけてオールを一本抜いて持って行ってしまいボート操縦不可となる。
その後離岸流に乗ってしまい、危うく遭難しかけたという笑えない思い出がある。 https://t.co/bTjz7DFy8G— くろかわアット(平常運転) (@634_kuro) October 2, 2018
どれも、実際の体験談です。
手こぎボートのようにオールがないとさらに危険ですから、流されてヤバいと感じたら浮き具は捨てて泳いで戻らないといけません。
その時に、ライフジャケットは絶対に必須です!
『泳げないから浮き具で遊ぶ』っていう人はもちろん、泳ぎが得意でも子供さんなら必要です。
浮き具はずっと浮いててくれるので、乗っている人間は四六時中呼吸ができるから、大船に乗った気分になってしまいます。
そこが、落とし穴なんですね…
だけど、どんなに大船でも海の広さに比べれば、ちっぽけなもんです。
(出典:https://blog.goo.ne.jp/kkoyama2010/e/b220c893696b27185bf9d9246c00eca7)
海に浮かんでいるカス(失礼!)のようなものが船です。
このアングルだと、バナナボートが浮いていても見えないくらい小さいです。
こう見ると、海の怖さが伝わりませんか?
まとめ
離岸流は潮の押し引きとは違って分かりづらく、漁師など海のプロでない限り見分けるのが困難です。
その流れも速いもので、水泳上級者レベルのタイムで流されてしまいます。
そんな離岸流の特徴、対処法をもう一度おさらいしておきましょう。
- 海岸が凸凹している
- 海岸にゴミが溜まっているなど、何らかの爪痕がある
- 監視員の目が十分に行き届いている
- 遊泳エリアの沖合いにはブイが張ってある
- 決して流れに”逆らう”のではなく、”抜け出る”ために流れに垂直に泳いで、流れがなくなったり向岸流に乗れたら海岸まで泳いで戻る。
- 離岸流に乗ってブイまでたどり着いてそこにつかまって、手を振って助けを求める。
気付かれなければ、ブイを伝って陸地に戻る。 - 泳いで戻る際は時々仰向けになって浮き、疲れをとる。
最後に、
水は、身近にあるものなので、普段扱い慣れていると錯覚しがちです。
人間を持ちあげる(浮かす)こともできれば、流すこともできます。
相撲取りの何百倍ものパワーがあると思っておいてください。