愛知県刈谷市で1月24日午前、マンホールで作業していた男性の作業員が自動車と接触し落下するという、少し特殊な事故が起こりました。
当時は現場近くに警備員を配置して交通整理をしていたそうですが、マンホール周囲に囲いなどは設置されていなかったといいます。
このニュースを聞いて、『これって、責任は誰にあるの?』と疑問に思うことと感じます。
- 事故の直接の原因になったのは自動車
- 作業場所周辺に囲いをしていなかったのは工事業者
いずれに責任があるようにも思えますが、実際のところはどうなのでしょうか?
一般的にこういう事故の場合は自動車側に責任が認められる場合が大半ですが、さすがにそれでは可哀想・・・
そこでこの記事では、自動車を運転していて過失が問わる時がどういう時なのかを再確認しながら考えていこうと思います。
マンホールから頭を出して事故!責任は誰?車か工事業者?
運転手の過失があるのはどんな時?
自動車を運転していて事故を起こした場合、
- 自動車側(自分)が止まっている場合
- 相手が赤信号で突っ込んできた場合
などでない限り、自動車側の責任がナシになることはありません。
今回のマンホールでの事故はこれらのいずれでもないので、やはり車を運転していた人の過失が問われてしまうのでしょうか?
自動車賠償責任保険法(自賠法)では、自動車運転の事故に対する責任(賠償)については次の通り決めています。
「運転者が自動車の運行によって他人の生命、身体を害したときは、損害賠償する」
しかし、全部が全部事故原因を運転者に課すわけにはいかないので、例外が認められており、
と取り決められています。
しかし、今回はかなり特殊な例。
今回車を運転していた人がどうなるのかはこの後で解説しますが、その前に、自動車事故で理不尽な判決が出た例を紹介しましょう。
過去にはこんな事例が・・・
マンホールでの事故とは全く違いますが、誰が見ても理不尽だと思う事例が過去にありました。
片側1車線の対面通行(一方通行ではない)道路で、対向車がセンターラインをはみだして衝突し事故になりました。
しかし、事故の判決は衝突された側のほうに4,000万円の賠償が命じられたのでした。
これは明らかに”もらい事故”です。
にもかかわらず・・・
確かに、センターラインをはみ出すこと自体、事故を起こしていなくても交通違反になるわけですから、相手が全過失のように思えます。
しかし、さきほど紹介した免責条件の1.に引っ掛かっていました。
『注意する』の言葉の意味をもう少し掘り下げると、
注意して、事故を防ぐための最大限の努力をすること
です。
この例でいくと、
他にもあると思いますが、事故を避けるための最大限の努力をしなかったことに対しても責任が問われるわけです。
それにしても、4,000万円の賠償はあまりにも可哀想すぎますね・・・
結局、どうなるのか?
話を戻します。
紹介した免責条件の3.はまず間違いなく大丈夫でしょう。
普通乗用車なので定められた車検も受けているでしょうし。
しかし、グレーなのは1.と2.です。
1.の『注意』のほうはあいまいな言葉で、『ここからは注意、それ以下は不注意!』というふうにハッキリした線引きができないのが実情ですし、運転席側を常時映したドライブレコーダーでもないかぎり正確な判断は困難です。
また、2.のほうは、ニュース記事を見る限りは作業場所のマンホール周囲を囲っていなかったことから、ある程度の過失はあるでしょう。
しかし、それが全過失なのかどうか?という点では微妙です。
例えば、『工事中』の立札だけでもあれば、運転者がそれを見落とした可能性が考えられるとして過失が認められる場合もあります。
そして、工事業者が例え何の事故防止対策をしていなかった場合でも、マンホールのフタが開いていたことが明らかに分かるようなケースなら、運転者が違和感を感じて注意を払う義務が生じる可能性があります。
まとめ
愛知県刈谷市で起きた痛ましい事故。
今回は特殊な事例で、マンホールから頭を出した時に車と衝突したというシーンでした。
工事業者もマンホール周辺を囲っていなかったことから彼らに全責任があるように思いますが、付近に立札を立てているなど工事していることが認知できた場合、車の運転手にも過失が問われてしまうこともあります。
それにしても、我々が考えている常識と法律とは必ずしも一致しないことが少なくないですね。