『けいおん!』などの代表作を生み出したところで知られる、『京都アニメーション』のスタジオで7月18日、放火事件が起こりました。
玄関から建物に侵入してきた犯人がバケツでガソリンをまき、火をつけたと言われています。
ガソリンはクルマやバイクを走らせる身近な液体ですが、少ない量で大きな爆発力を引き起こすパワーがあります。
犯人が持っていたのは40リットルというとんでもない量だったので、その爆発力はテロ級であることが想像できますね。
実際、鎮火したあとの現場はこのように鉄製のらせん階段が熱によって無残に変形し、周囲のものが爆風で吹き飛んだことが伺えます。
(出典:https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019072102000079.html)
この写真だけでも火災の威力の凄まじさが伝わってきて、開いた口がふさがりません。
そこでこの記事では、3階建ての建物を一瞬にして全焼させたガソリンの爆発力の凄まじさをお伝えするとともに、同様の火災が起きた時に助かる方法がなかったのか?について言及していきたいと思います。
ガソリンの爆発力とは?
クルマやバイクが走るのはガソリンの○○のおかげ
ガソリンと聞くと、クルマやバイクを走らせるために使う燃料であることはご存知かと思います。
ただ、ガソリンと空気が絶妙なバランスで混ざり合ったところに火をつけられ、それが爆発した力で走っているということは、理系人間かよほどクルマのメカ好きな人にしか知られていないでしょう。
特にクルマは車体だけで1トン以上もありますが、そんな鉄のかたまりが時速100キロとかいう驚異的なスピードで走ります。
そしてそれも、ガソリンと空気とのコラボが爆発した力がなせる技なんです。
クルマやバイクが走るためのガソリンは少量でOK
排気量という言葉は聞いたことがあると思いますが、あれはエンジンが1回転するのに必要なガソリン+空気の量です。
そして、それらの割合は、ガソリン1に対して空気が14.7というのが最も効率よく爆発させられるといわれており、軽自動車なら排気量660ccですから、ガソリンはたったの42ccでいいことになります。
たったそれだけの量で1トンを動かせる力があるということです。
犯人は40リットルもガソリンを持っていた!
犯人は犯行の約30分前に付近のガソリンスタンドで40リットルものガソリンを購入しました。
42ccのガソリンでクルマのエンジンを1回転させられるわけですから、40リットルというととんでもない量だということがわかります。
考えただけで恐ろしくなりますよね。。
そんな大量のガソリンが爆発したらどうなるか?
その威力が分かる映像を見て頂きましょう。
最初は真っ黒でどこに何があるのかサッパリ分かりませんでしたが、凄まじい爆発とともに一瞬にして夜から昼になったように明るくなりました。
映像では25リットルで実験していますが、これが40リットルとなると…
あまりの恐怖に寒気がしてきます。
そして、周囲に人が立っていないので縮尺が分かりづらいですが、両隣の樹木を飲み込んでしまおうかというほどの爆発範囲であることが分かります。
今回の京都アニメーションでの火災は、死者・重軽症者合わせて70人近くです。
人間70人を一気に飲み込むパワーがあるのは、この映像から簡単に分かるでしょう。
火災現場の温度はどれほどか?
ズバリ…
火災の時の建物内の温度は、最大600~900℃まで上昇します。
(参考:教えてgoo)
サウナの温度はだいたい90℃前後なので、その10倍ということですね。
・・・
想像がつきません。。
室温が900℃にまで達してしまうと、建物の中のもののほとんどが自然発火します。
参考までに、身近なものが自然発火するときの温度はこちらです。
- 木材 250~260℃
- 新聞紙 290℃
- さらし、木綿 495℃
- てんぷら油 360~370℃
(出典:https://www.city.yao.osaka.jp/0000019191.html)
900℃というと、上に書いたもの全てが自然発火することになります。
ましてや、アニメーションスタジオなんかは原画などの紙や図面がたくさんあるはずですから、全てが火種になった可能性が高いです。
興味深い実験動画
ここで、中学校の理科の授業を思い出してみてください。
”融点(ゆうてん)”と”沸点(ふってん)”は覚えていますか?
- 融点:固体(かたまり)が溶けて液体になる温度
- 沸点:液体がさらに熱せられて気体(ガス)になる温度
いいでしょうか?
一番わかりやすい水でいきましょう。
氷が溶けて水になる温度は0℃、水が熱せられて沸騰し水蒸気になる温度が100℃ですよね。
すなわち、氷の融点は0℃、沸点は100℃ということになります。
水蒸気も気体なので空気のなかまです。
ここから先は、気温900℃=水蒸気900℃と考えてください。
その上で、次の動画を見てみましょう。
実験では水の沸点をはるかに超えた”過熱水蒸気”を用いていますが、動画の前半はその説明に費やしているので、3:10~辺りからご覧ください。
気温(水蒸気の温度)が400℃少し超えた時点で、
- マッチに火をつけることができる。
- 紙に焦げ目をつけることができる。
こういうことができてしまうのです。
火災現場の気温900℃というのはその倍以上!
もはや、人間の皮膚なんかは一瞬でただれてしまいます。
助かる方法はなかったのか?
勤め先にいて仕事に集中しているなか、あんな不意打ちを喰らって生き残れる方法はあったのでしょうか?
先ほど見て頂いた爆発映像は、例えるなら飛行機が墜落して爆発・炎上した光景によく似ています。
『飛行機事故はほとんど助からない』と言われているため、あんなのを見れば絶望的になりますよね。
しかし、いつああいうテロのような事件が起きても対処できるよう、少しでも助かる確率を上げる方法を考えていきましょう。
ガソリンのニオイがした時点で逃げる
一番難しいですが、一番助かる確率が高い方法です。
どんな災害でも初動対応の早さが明暗を分けると言われています。
今回、犯人は玄関から侵入してバケツでガソリンをまき火をつけたわけですが、ガソリンがまかれた時点で燃料臭がするはずです。
そして、1階にいる人が非常ベルで上階に知らせ、すぐに避難するようにするのです。
しかし実際は、パニックで最善の対処ができないことが多いので、燃料臭を検知して非常ベルが鳴るような仕組みがあってもいいかも知れませんね。
防御シールドの使用
(出典:https://jp-swat.com/equipment/ballistic_shield/index.html)
警察が出動するときによく使われる盾で、マグナム弾をも防げる防御力を持っています。
あれは警察だけが使えるものではなく市販もされているので、1人1枚与えておくのです。
以前、東海道新幹線の車内で乗客3人が殺傷された事件を受け、車内にさすまたを常備したというニュースはよく知られていますが、あれと同じようなことを導入するという考えです。
大きめのポリ袋をかぶって逃げる
火災の死因の半数近くは、煙の吸引によるものです。
(出典:https://www.new-cosmos.co.jp/release/2244/)
かつて管理人が出張で泊まったホテルのドア裏に、避難用ポリ袋が貼ってあったのを思いだし、『これは理にかなっている!』と思ったので紹介します。
袋をかぶってキレイな空気だけを吸うのが目的ですが、小さい袋だとすぐに酸素がなくなって長時間避難できなくなります。
なので、45リットル以上のポリ袋を常時持っておき、火災の時に長時間避難しないといけないときにかぶります。
水道があるなら水をかぶれ!
避難の時は、煙だけでなく熱でやられてしまわないように、ポリ袋を濡らして自分の身体も全身水をかぶり、ポリ袋の中にたくさんのキレイな空気を入れて頭からかぶります。
その後、煙が中に入らないようにしっかり縛り、できるだけ早く外に逃げましょう。
先に説明した通り、火災現場は気温900℃もの温度ですから、少しでもその熱の影響を受けないような工夫が必要です。
まとめ
ガソリンがいかに怖い液体なのか、お分かり頂けたかと思います。
40リットルものガソリンが爆発すると、まるで飛行機が墜落したときのような規模になります。
そしてそれが狭い建屋で起きてしまうと・・・
それが、今回の京都アニメーションでの火災の威力だったのです。
そんな状況で助かるためには、やはり初動対応の早さ。
そこから爆発が起こった時の防御をすべく防御盾の使用も望ましいです。
そして、爆発が起きれば火災も起こり、死因の約半数を占める煙をなんとかすべく、大きめのビニール袋を被り、水を全身に浴びたうえでやけどの対策をし外へ逃げます。
特に不審者が侵入しやすいような建屋の造りだった場合、京アニ火災と同様の事件が起きることを想定した避難訓練が適宜必要です。